2018年ついにフルモデルチェンジしたジムニー・ジムニーシエラ。
20年ぶりのフルモデルチェンジなだけあって、安全性能も最新の技術・機能が搭載されています。
スズキの安全技術は基本安全・予防安全・衝突安全3つで構成されていて、ドライバーが安全に運転できるような設計・技術が施されているのです。
この記事ではジムニー・ジムニーシエラに搭載された安全技術について、どんな技術か・どんな人に必要なのかを、現役9年目の自動車整備士が解説します。
購入をする上で参考にしていただけると嬉しいです。
この記事の画像出典:ジムニー 安全装備|スズキ
基本安全:運転しやすく安心して乗れる技術
基本安全技術は、運転をしやすい視界・姿勢・操作を追求した設計技術です。
この技術について以下の3つにまとめました。
- 視界性能
- 運転姿勢と操作系
- インターフェース
視界性能
JB23と比較するとAピラーの傾斜が無く直立に近いデザインになったので、前方・側方の死角が少なくなりました。
またドアガラス下部に段差を付けることで、ドアミラーやサイドアンダーミラーの視認性が上がり、最大の死角である助手席側下部もしっかりカバーできています。
ダッシュボードの上面は水平に近く、車の傾斜が把握しやすいのでオフロード走行でも運転しやすいと言えるでしょう。
運転姿勢と操作系
フロントシートのクッションフレームは、従来のジムニーと比べて70mm広くなっているので、体格の大きい人でもゆったり座れるでしょう。
またクッション性も良くなり、長時間の運転やオフロード走行でも疲れにくいです。
フロントシートの前後の調整幅は240mmで、10mmごとに細かく調整できます。
ステアリング機構はジムニー初のチルトステアリングが採用されて、35mmの高さ調整が可能になりました。
インターフェース
メーターは中央部に道路状況や燃費などを表示するマルチインフォメーションディスプレイ。
左にタコメーター、右にスピードメーターを設置し、直感的に見やすいデザインです。
パワーウインドウスイッチをエアコン下部に移動させることで左手のみでよく使う機能操作が完結できます。
スイッチ操作も押す・つまむ・握るの直感的操作が可能で、スイッチ自体も大きめにデザインされているのでグローブをした状態でも確実に操作できます。
予防安全:危険な場面にあわないための技術
予防安全技術は別名「セーフティサポート」と呼ばれるさまざまな機能を盛り込んだパッケージ商品です。
事故を未然に防ぎ、ヒヤリとする場面を減らす技術を5つ紹介します。
- 標識認識機能
- 車線逸脱警報機能
- ふらつき警報機能
- 先行車発進お知らせ機能
- ハイビームアシスト
標識認識機能
標識認識機能は走行中に単眼カメラが標識を認識すると、マルチインフォメーションディスプレイに標識マークを表示させ、ドライバーに注意を促します。
単眼カメラが認識できる標識は以下の4種類です。
- 最高速度標識
- はみ出し通行禁止
- 車両進入禁止
- 補助標識「終わり」
また補助標識「終わり」を認識すると、メーター内表示が消灯します。
車線逸脱警報機能
約60〜100km/hで走行しているとき、デュアルセンサーブレーキコントローラが道路の左右の区画線と車の進路を予測・認識します。
前方不注意などで区画線からはみ出ると判断した場合に、警告音とマルチインフォメーションディスプレイの表示でドライバーに注意を促す機能です。
ふらつき警報機能
約60〜100km/hで走行しているとき、道路の区画線内での蛇行パターンをデュアルセンサーブレーキサポートがチェックしています。
チェックの結果「ふらつき」を判断した場合、または車線逸脱警報が連続で作動した場合に警告音とマルチインフォメーションディスプレイの表示で注意を促す機能です。
先行車発進お知らせ機能
セレクトレバーがD・N・2レンジ(MT車はR以外)でブレーキペダルを踏んで停車しているときに、先行車が5m以上離れても自車が停止を続けた場合に作動します。
作動時は警告音とマルチインフォメーションディスプレイの表示で、先行車が発進したことをドライバーに知らせます。
ハイビームアシスト
約30km/h以上で走行しているとき、ライトスイッチが「AUTO」かつ「ハイビーム」を選択しているが作動条件です。
ハイビームアシストは周囲の環境に応じて、ハイビームとロービームの切り替えを自動で行います。
デュアルセンサーブレーキサポートが対向車・先行車・街路灯などの市街地を認識した場合はロービームに切り替え、認識物が無くなるとハイビームに自動復帰します。
予防安全:危険が迫った時に回避する技術
予防安全は事故を未然に防ぐだけではなく、いざ危険が迫ったときに回避するための技術も必要です。
前述した予防安全の根幹を成す技術を2つ紹介します。
- デュアルセンサーブレーキサポー
- 誤発進抑制機能
デュアルセンサーブレーキサポート
デュアルセンサーブレーキサポートは、フロントガラス上部の単眼カメラとレーザーレーダーの2つで車・人・道路の白線・障害物などを検知しています。
センサーが前方の人や車・障害物を検知したときに、以下の3つの機能によって衝突の回避や被害軽減を図っています。
走行時(約15〜100km/h)、検知した車などとの衝突の可能性があると判断したときに、ブザーによる警報とメーター表示でうドライバーに知らせます。
走行時(約15〜80km/h)、検知した車などとの衝突の可能性が高いと判断した後、ドライバーが強くブレーキペダルを踏むと制動力(ブレーキの効き)を高めます。
走行時(約5〜100km/h)、検知した車などとの衝突が避けられないと判断したとき、自動的にブレーキをかけます。
センサーが人を検知している場合は、車が約60km/h未満でないと作動しないので注意が必要です。
誤発進抑制機能
誤発進抑制機能は4AT車にのみ搭載している機能です。
停車時または徐行時(約10km/h以下)、セレクトレバーがD・2・Lの位置のときにセンサーが前方約4m以内の障害物を認識します。
この状態で誤ってアクセルペダルを急激に踏むと、エンジン出力を最長約5秒間抑えて急発進・急加速を抑制。
同時にブザー警告とメーター表示によって、ドライバーに作動を知らせます。
また抑制されたエンジン出力は機能解除後徐々に戻り、通常の走行が可能になります。
対象物の形・天候・路面状況などの環境によっては衝突を回避したり、被害を軽減できない場合があります。
ハンドル操作やアクセル操作をしているときは作動しない場合があります。
衝突安全:万が一の衝突被害を軽減する技術
デュアルセンサーブレーキサポートであっても、人の急な飛び出しなど衝突が回避できない場合があります。
その場合万が一衝突しても車内の人や歩行者への被害を軽減するために、以下の5つの技術が取り入れられています。
- 軽量衝撃吸収ボディーTECT
- 歩行者傷害軽減ボディー
- 6つのSRSエアバッグを標準装備
- フロント・リヤELR3点式シートベルト
- 衝突時に乗員への衝撃を緩和するシート構造
軽量衝撃吸収ボディーTECT
TECTとはスズキが独自に開発したボディー構造で、衝突時の衝撃を効率良く吸収・分散することができます。
またコンピュータによる構造解析と高張力鋼板を活用することにより、軽量化と車内の安全性を両立させています。
TECTはジムニーの採用によりランディ以外の全ての車種に採用されました。
歩行者傷害軽減ボディー
フロント廻りのボディーに、歩行者との接触時に頭部や脚部のダメージを吸収する衝撃吸収構造を採用しています。
採用箇所は以下の通りです。
- カウルトップ
- ワイパー
- ボンネット
- ボンネットヒンジ
- 左右フェンダーパネル
- フロントバンパー
6つのSRSエアバッグを標準装備
エアバッグは前席だけで6箇所展開します。
正面衝突時に前から展開する運転席・助手席SRSエアバッグ。
側面からの衝突時に頭部を保護するために横からSRSカーテンエアバッグが展開し、さらに胸部保護のためにフロントシートからSRSサイドエアバッグが展開します。
この6つのエアバッグは全グレードに標準装備されているので、どのグレードを購入しても安全に運転ができますね。
もちろんですがエアバッグはシートベルトを補助する装置なので、シートベルトを装着しないと作動しません。
また衝突の箇所や衝突の力など、条件によっては作動しない場合があるので注意が必要です。
フロント・リヤELR3点式シートベルト
シートベルトは2段階に分けて乗員保護の作動をします。
衝撃が加わった瞬間に、一時的にベルトをロックして拘束力を高めるプリテンショナー作動が1段階目。
ロック後胸部への負担を効果的に緩和するために、徐々にベルトを伸ばす可変フォースリミッター作動の2段階です。
このシステムを使ったシートベルトは、前席だけではなく後席にも採用されています。
衝突時に乗員への衝撃を緩和するシート構造
高剛性・高強度なフロントシートフレームが採用されています。
全体的にシートが大きいので、後ろから追突されても上体が安定しやすく首の負担を軽減することができます。
その他の安全装備
そのほかにも、安心してより安全に運転するための技術を8つ紹介します。
- ESP(車両走行安定補助システム)
- エマージェンシーストップシグナル
- 後席シートベルトリマインダー
- オートライトシステム
- ライト自動消灯システム
- サイドアンダーミラー付ドアミラー/li>
- ヒーテッドドアミラー
- ヘッドランプウォッシャー
細かな機能ですが、どれも快適なドライブに役立ってくれます。
ジムニーのセーフティサポートは必要?
セーフティサポートとは、デュアルセンサーブレーキサポートの機能を使ったスズキの運転サポート技術です。
ジムニーではXC、ジムニーシエラではJCの上級グレードに標準装備され、その他のグレードにはメーカーオプションで装備できます。
ジムニー・ジムニーシエラの中級・標準グレードでは装備する・しないを選択できるということです。
ではセーフティサポートが必要な人、必要でない人はどのような使用方法が考えられるでしょうか?
検知性能・制御性能・感度には限界があります。
天候や先行車の車両形状、道路の白線の視認性によっては作動しないケースもあります。
セーフティサポートはあくまで「運転をサポートする技術」です。
機能に頼り切った運転はしないで、常に安全運転を心がけてください。
セーフティサポートが必要な人
私が考える「セーフティサポートが必要な人」以下の3パターンの人です。
新型ジムニーは女性にも人気があり、従来のジムニーとは違って街乗りメインで購入される人も増えてきました。
中には免許取り立ての方や、購入をきっかけにペーパードライバーから脱却する人もしばしば見受けられます。
前述の機能解説からわかる通り、デュアルセンサーブレーキサポートを始めとしたセーフティサポートは、街乗り・高速道路使用時に真価を発揮するのです。
なのでセーフティサポートは、運転に自信が無い人や街乗り・高速がメインの人に必要だと言えるでしょう。
セーフティサポートが必要でない人
「セーフティが必要でない人」は以下の2パターンの人だと考えられます。
- オフロード走行などの遊び車で購入する人
- インチアップやホイールサイズの変更などのカスタムを検討している人
オフロードや悪路を走行しているとき、デュアルセンサーブレーキサポートが過敏に反応し、本来の性能を発揮できない可能性があります。
当然ですがオフロード走行時はデュアルセンサーブレーキサポートの機能をOFFにするスイッチがありますが、正直言って面倒臭いと思います。
さらに、サービスマニュアルのデュアルセンサーブレーキサポートシステム概要に以下の注意事項があります。
- デュアルセンサーブレーキサポート付近のフロントガラスにステッカー(透明なものも含む)を貼ってはいけないこと
- フロントガラスやワイパーブレードは純正部品を使用すること
- 車高や車の傾きにより、前方の車を認識できない可能性があるため、サスペンションを改造しないこと。
- タイヤは同一サイズ及び同銘柄のタイヤを使用すること。
- タイヤの空気圧を適正にして使用するとともに、摩耗差のあるタイヤを混在してはいけないこと
上記を守らないと、デュアルセンサーブレーキサポートや誤発進抑制機能が誤作動して事故に至る可能性があります。
デュアルセンサーブレーキサポート装着車は車高を上げると、センサーを再設定しなければなりません。
再設定には数万円かかります。
また上級グレードになると、ヘッドライトのオートレベリング機能も再設定しなければなりません。
お金と手間がかかりすぎますよね。
以上のことから、オフロード走行メインや改造を検討している人にはセーフティサポートは必要ないと言えます。
安全に運転するために
たしかにスズキの安全技術は、運転をサポートする上で充分すぎる性能を持っていますよね。
ただし購入後の用途によっては必要ないという人がいるのも事実です。
セーフティサポートはメーカーオプションなので、注文後・納車後に後付したり取り外しができないオプションなのです。
車は決して安い買い物とは言えません。
後から後悔しないように、妥協せず注文前にしっかり用途を考えた上で購入しましょう!
今日ジムニー(JB64)で強めのブレーキ踏んだらハザードが高速点滅した。
これで2回目で調べてみたらエマージェンシーシグナルシステムという安全装備らしい。
知らないと故障かと思うわ( ;´・ω・`)— しんてん@JA55/JB64乗り (@shinten883) July 28, 2022